カウンセリングの技法が「棒読み」になる原因と対策|落語『七段目』に学ぶ、感情を翻訳する「型」の真髄

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キャリアコンサルタントの皆様。

前回の記事では、ロジャーズの「共感的理解」をテーマに、支援者が「登場人物全員に意識を飛ばす」ことの重要性をお伝えしました。

しかし、いざ実践しようとすると、アイビィのマイクロカウンセリング技法がどこか事務的になり、クライアントの心に響かない「棒読み」の状態になってしまう……。そんなスキルアップの壁に突き当たってはいませんか?

「キャリコンの勉強してんねやけどな、『お辛いんですね』て言うたら、相手に『あんたに何が分かんねん』て怒鳴られたわ」

喜六
喜六

「アホやな。型だけなぞっても、中身の『心』がこもってなけりゃ、ただの空念仏や」

清やん
清やん

実は、技法が「台詞」になってしまうのは、あなたの共感力が足りないからではありません。単に「型」に血を通わせる「翻訳の視点」が欠けているだけなのです。この記事では、落語『七段目』に登場する「内的世界への没入」をヒントに、マイクロカウンセリング技法を生きた支援へと昇華させる方法を解説します。


マイクロカウンセリング技法における「かかわり行動」とは?

結論:単なるマニュアル動作ではなく、クライアントの「内的世界」という舞台に立つための「スイッチ」を入れる行動です。

落語『七段目』に見る「舞台の共有」

芝居狂いの若旦那が二階で仮名手本忠臣蔵(七段目)に没頭しているとき、彼は現実の世界にはいません。定吉が声をかけても「目ぇむいて、耳に入らん」状態です。そこで定吉は、普通に声をかけるのをやめ、芝居の台詞(型)をぶつけます。

定吉:「見れば、かないに、取り込み事も、ある様子」

この一言で、若旦那は「あいやずんと、ささいな……」と応じ、二人の間に「芝居」という共通の舞台が成立します。

カウンセリングへの応用

マイクロ技法の土台である「かかわり行動(視線、身体言語、声の調子)」もこれと同じです。マニュアル通りに座るのではなく、クライアントが今どのような「内的世界」にいるのかを察知し、その世界観に合わせた「構え」を取る。相手と同じ舞台に立つスイッチを入れることで初めて、ラポール(信頼関係)は動き出すのです。


「伝え返し」が棒読みになるのを防ぐ技術

結論:言葉を単にオウム返しするのではなく、その裏にある隠れた感情を「相手の言葉」に翻訳して添える必要があります。

1.落語の「言い換え」技術:悋気(りんき)の翻訳

私が落語の口演で大切にしているのが「言い換え」です。 現代では馴染みの薄い「悋気」という言葉を出す際、私はあえてこう畳みかけます。

  • 原文:「悋気(りんき)起こしとんな」
  • 翻訳:「悋気起こしとんな、妬いてけつかる」

「相手の言葉をそのまま返して、さらに『今の気持ち』を添えてやるんやな」

喜六
喜六

「せや、それが『感情の反映』や」

清やん
清やん

事柄(悋気)に感情の翻訳(妬いている)を即座にくっつけることで、お客様のリズムを止めずに物語へ没入させるのです。

2.感情の反映:事柄+感情の翻訳

カウンセリングにおける「感情の反映」も同様です。クライアントが語る「事柄」の裏にある感情を「さらっと翻訳」して添える技術が求められます。

  • 悪い例(棒読み):「納得がいかないのですね」
  • 良い例(感情の翻訳):「納得がいかない。それだけ仕事に誇りを持っていたからこそ、今の状況が悔しいのですね」

この「事柄+感情の翻訳」という型によって、クライアントは自分の本当の気持ちを自覚し、より深い自己探索へと誘われるのです。

いっきょうのコラム

「へっつい」を「台所」と訳す稽古

落語の稽古では、古い言葉をどう届けるかを徹底的に考えます。「へっつい」と言ってから間髪入れずに「台所」と言い換える。この動作がスムーズになるまでには、何度も繰り返す「口慣らし」の稽古が欠かせません。

マイクロカウンセリングの技法も全く同じです。棒読みになるのは、その言葉がまだ自分の「身体知」になっていないから。落語家がセリフを自分の血肉にするように、私たちもロールプレイや日々の研鑽を通じて、感情を「さらっと翻訳」できるまで型を磨き上げる必要があります。


まとめ:階段を降りた先にある「真実の共鳴」

『七段目』の最後、二階から落ちて目を回した定吉はこう答えます。

「いぃえぇ、七段目」

現実には階段から落ちて痛い思いをしていますが、定吉の心はまだ「七段目」という物語の中にあります。これこそが、支援者がクライアントの内的世界を共に生きる「共感」の究極の姿です。

型を使いこなし、相手の背景までを自分事として聴く。その修練の先に、あなたの相談室はクライアントが「新しい人生という舞台」へ一歩踏み出すための、真実の場所へと変わるでしょう。

どうぞ、よい「構成」を。


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いっきょう影褒め亭
いっきょう影褒め亭
国家資格キャリアコンサルタント×人生小噺家
「国家資格キャリアコンサルタント×ビジネス小噺家」 落語の世界観に魅せられ、13年のキャリアを持つ。「死神」や「いきだおれ」といった、一癖ある演目を好む。国家資格キャリアコンサルタントとしての知見と落語を融合し、独自のスタイルを確立。人の強みや人生の物語を落語に仕立てることで、第三者視点からその人の魅力を浮き彫りにする活動をしている。 また、13年間継続している合気道の経験から、落語と合気道に共通する「相手を活かす」考え方や、継続のコツについて研究を重ねている。
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