【キャリコン解説】落語『動物園』が教える「仕事の視点転換(リフレーミング)」の極意

仕事の視点転換(リフレーミング)
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「毎日同じ仕事の繰り返しでマンネリ」「今のキャリアに行き詰まりを感じている」——あなたは、そう感じていませんか?

先日公開した第1弾レポートでは、人情噺『ラーメン屋』がいかに「深い共感」と「自己開示」を生み出したかをご紹介しました。しかし、あの日、約50名の参加者の間にあの「対話の化学反応」が生まれたのには、明確な理由があります。

それは、私が繋ぐ「バトン」を用意してくださった、1席目の遊人亭だん扇さんによる『動物園』という、見事な「場づくり」と「思考の地ならし」があったからです。

本記事では、落語『動物園』が参加者の「仕事の視点」をどう耕し、主体的な「キャリアの創意工夫(ジョブ・クラフティング)」へといざなったのかをアンケート分析から紐解きます。マンネリ化した仕事やキャリアに行き詰まりを感じている方にとって、笑いながら「リフレーミング」を学べる極意を、キャリアコンサルタントの視点から解説します。


滑稽噺の役割:固定観念を破る「思考の枠外し」

落語会では、重厚な人情噺の前に、軽い「滑稽噺(こっけいばなし)」を挟むのが定石です。これは、聴衆のガチガチになった「思考の枠(固定観念)」を心地よく叩き壊し、柔軟な姿勢へと導く役割を担います。

だん扇さんが披露された『動物園』は、ひょんなことから虎の着ぐるみを着て動物園の檻で働くことになった男の物語。この「あり得ない状況」での主人公の妙な工夫が笑いを生みます。

キャリアコンサルタントの視点から見ると、この滑稽噺は「物事を面白がる視点」を参加者にインストールする効果がありました。いきなり感情を動かす深い自己開示(『ラーメン屋』)を求めるのではなく、まずは滑稽な状況で参加者の「思考」を柔軟にすることで、2席目の「深い共感」に繋ぐための完璧な地ならしとなったのです。


【アンケート分析】『動物園』が引き出した「キャリアの創意工夫」

この滑稽噺の狙いは、アンケート結果に明確に表れていました。『ラーメン屋』の「共感・人情」とは対照的に、『動物園』の対話では、参加者自身の「仕事観」や「キャリア」に関する視点が活発に語られていたのです。

2-1. 「創意工夫(ジョブ・クラフティング)」への着目

主人公の滑稽な行動を、単なる「おふざけ」ではなく、「仕事の工夫」として捉える視点が非常に多く見られました。これは、キャリア論における「ジョブ・クラフティング」(自発的に仕事のやり方や意味を再構築すること)の概念そのものです。

  • 「最初は楽して働けると思っていたが、(主人公が)来場者に喜んでもらえるように創意工夫をし、結果的に自己効力感を得ていたと思った」
  • 「結局、工夫によって、自分に合った仕事だったんだと思いました」

仕事に対する主体性を、笑いを通じて自然に引き出すことができたのです。

2-2. 「視点が変わる瞬間(リフレーミング)」への共感

作中の強烈な「気づきの一言」に、自身のキャリアを重ねる声も印象的でした。困難な状況や固定化された仕事の「視点」が変わる瞬間(リフレーミング)が、対話を通じて当事者として体感されていました。

  • 「ライオンの先輩の『ほんまにやりたかったことはこれちゃうやろ!』と言う一言で、人生変わることがあるんだなと(対話で話した)」
  • 「夢を最後追い続けて逃げたライオンの未来に、チャレンジの喜びを感じました」
  • 「(主人公の状況を)ブラック企業からの自立と感じた」

2-3. 「他者への貢献」という新たな発見

一見、自分のことで精一杯だった主人公の行動が、結果的に他者に与えた影響に着目する対話もありました。

  • 「トラさんがとても素敵な働きをされたと思いました。(ライオンの先輩を元気づけた)」
  • 「相手のことを思いやるということを話しました」

これは、単なる自己利益だけでなく、仕事における貢献感(利他性)というキャリアの根幹に触れる深い対話につながっています。


キャリアコンサルタントとしてのいっきょうの視点

滑稽噺は「リフレーミング」の最強教材

今回の分析で、落語の「型」が対話の「質」をデザインできることが、より鮮明になりました。

  • 人情噺(『ラーメン屋』): 「心の扉を開く(深い共感)」ツール
  • 滑稽噺(『動物園』): 「思考の枠を外す(視点転換)」ツール

マンネリ化した仕事や困難な状況も、「視点」を変えれば面白くできる。だん扇さんの『動物園』は、そのキャリア論の極意を、説教臭い座学ではなく、「笑い」を通じて感覚的に学べる「最強のリフレーミング教材」だったのです。これは、読者にとって発見、感動、学び、娯楽となる有益なコンテンツといえます。


見事な「パス」が創り出した「肚に落ちる」体験

だん扇さんが『動物園』で参加者の「思考」を柔らかくほぐし(地ならし)、その上で私が『ラーメン屋』で「感情」の深い部分に触れる(共感)。

この「思考(視点転換)→感情(自己開示)」という見事なリレーがあったからこそ、あの日、あの場は、学びが「肚に落ちる」深い体験に満たされたのだと確信しています。 だん扇さんの素晴らしい高座に、心からの拍手を送ります。


落語の構造が提供する唯一無二のキャリア視点

落語の構造が持つ最大の特長は、物語全体を俯瞰し、登場人物の人生の「起承転結」と「オチ」を客観的に捉えることで、自分自身のキャリアを多角的に見つめ直すことができる点にあります。これは、他の手法では得難い、キャリアを「物語」として捉える唯一無二の視点を提供します。


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    ABOUT ME
    いっきょう影褒め亭
    いっきょう影褒め亭
    国家資格キャリアコンサルタント×人生小噺家
    「国家資格キャリアコンサルタント×ビジネス小噺家」 落語の世界観に魅せられ、13年のキャリアを持つ。「死神」や「いきだおれ」といった、一癖ある演目を好む。国家資格キャリアコンサルタントとしての知見と落語を融合し、独自のスタイルを確立。人の強みや人生の物語を落語に仕立てることで、第三者視点からその人の魅力を浮き彫りにする活動をしている。 また、13年間継続している合気道の経験から、落語と合気道に共通する「相手を活かす」考え方や、継続のコツについて研究を重ねている。
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