【キャリコン向け】企業支援の門を開く!落語『井戸の茶碗』に学ぶ「産業保健師」との縁のつくり方
こんな場面、心当たりはありませんか?
企業の人事担当者に電話してみた。「キャリアコンサルタントです」と名乗ったら、「うちは大丈夫です」と丁重に断られた。面識のない経営者にメールしてみた。返信はなかった。
キャリアコンサルタント(CC)として企業支援がしたい。でも、どこから入ればいいかわからない。資格はある、知識もある、熱意もある。なのに、なぜか企業の門が開かない。今日はそんな悩みを抱えるCCの皆様へ、企業の中へ入り込むための「縁のつくり方」をお伝えします。

1. 企業に入れないCCが見落としているたった一つのこと
個人向け支援には慣れていても、企業支援となると途端に壁を感じるのには明確な理由があります。企業に入れないのは、あなたの知識や熱意が足りないからではありません。「橋渡し役」がいないからです。
企業は「知らない人」を簡単に中に入れません。人事でも総務でも、外部の専門家を呼ぶには稟議が必要で、前例が必要で、何より「信頼できる人からの紹介」が必要です。いくら正面から「私はキャリアコンサルタントです。お役に立てます」と名乗っても、それだけでは動かない。企業には企業の論理があります。
では、どうすれば中に入れるのか。答えは非常にシンプルです。「すでに企業の中にいる専門家と縁をつくること」です。
2. 落語『井戸の茶碗』に学ぶ、縁を生み出す「往復」の力
古典落語に『井戸の茶碗』という噺があります。
屑屋の清兵衛が、浪人・千代田卜斎の古い仏像を買い取り、旗本・細川家の若侍に転売します。ところが、仏像の中から小判が300両出てきた。若侍は「これは卜斎殿のものだ」と返そうとしますが、卜斎は「一度売ったものは受け取れない」と断ります。
清兵衛は困りました。「受け取ってくれ」「受け取れない」を繰り返しながら、二人の間を何度も行き来することになります。しかし、この往復が縁を深め、最終的には150両ずつ分けることで話がまとまり——さらには若侍と卜斎の娘との縁談まで生まれます。
清兵衛は特別な交渉術を使ったわけではありません。ただ、誠実に往復しただけです。でもその往復が、思ってもみなかった縁を引き寄せました。
CCが企業支援に入るにあたり、この「企業」と「外部の専門家」の間をつなぐ清兵衛役になってくれるのが、実は「産業保健師」なのです。

3. 【実例】月1回の面談が、全国大会の縁につながった興國車輛のケース
産業保健師との定期的な関わりが、企業を外へ動かすきっかけになった生々しい実例があります。阪急電鉄の車両整備を担う中小企業・興國車両株式会社・禿裕隆社長から、こんな話を伺いました。
禿社長は、産業保健センターの保健師と月1回ほど定期的に面談を重ねていました。健康診断の結果のヒアリングや、個人的な悩みの相談などです。まさに清兵衛の往復と同じように、ただ誠実に関わりを続けていただけでした。
その面談の積み重ねの中で、「がん罹患者の復職支援」という事例が生まれました。そして、保健師がこう言ったのです。「社長、この素晴らしい取り組み、外で発表してみませんか」
その一言がきっかけで、禿社長は2023年の全国産業安全大会に登壇。大阪労働局のセミナーで産業保健の専門家とパネルディスカッションを行うなど、企業の縁は外へ向かって大きく広がっていきました。また、復職プログラムの設計にも、産業保健医の知見がしっかりと活かされています。
産業保健師という「すでに企業の中にいる専門家」との縁が、見事に外へ向かう扉を開いたのです。私たちCCにとっての清兵衛役は、まさに産業保健師なのです。

4. 明日から使える!産業保健師と縁をつくる3つのアクション
では、産業保健師との縁はどうやって作ればいいのでしょうか。特別な機会を待つ必要はありません。すでにある「場」に顔を出すことから始まります。
① 産業保健総合支援センター(さんぽセンター)のセミナーに参加する
各都道府県にあるさんぽセンターは、産業保健師・産業医・看護師・CCなど多職種が集まる場です。まずここに顔を出すことが、清兵衛の最初の「一往復」になります。
② 両立支援コーディネーター研修で名刺交換する
両立支援コーディネーター研修には、産業保健師、看護師、社労士、CCが混在して参加しています。研修後の何気ない一言での交流が、縁のはじまりになります。
③「事例を一緒に発表しませんか」と声をかける
縁がつながったら、「この取り組みを一緒に発表しませんか」と声をかけてみてください。興國車輛の保健師がそうしたように、その一言が企業を外へ動かす(CCを中へ招き入れる)引き金になります。
結び:横のつながりが、氷河期世代を長く支える
産業保健師はすでに企業の中にいます。CCはまだ外にいます。でも、清兵衛が誠実に往復したように、コツコツと縁をつないでいけば、思いがけない企業の扉が開くことがあります。
これから、ミドルシニア層や就職氷河期世代が病気や介護を抱えながらも長く働き続けるためには、企業の中の専門家(産業保健師)と、外の専門家(CC)が横でつながることが不可欠です。二者が手をつなぐことで、企業の内側に届く支援と、個人に届く支援が、太い一本の線でつながります。
「一度、話してみたいな」と思っていただけたら、まずは気軽にご連絡ください。一緒に、企業支援の扉を開く清兵衛の往復を始めましょう。
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