【キャリアコンサルタント向け】氷河期世代の4つの「構造的な傷」と国の支援プログラム3本柱

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キャリアコンサルタントの皆様。

あなたの目の前のクライアントが抱える課題は、「過去の失敗」ではなく、「日本社会の構造的な病」が原因であることをご存知ですか?

就職氷河期世代が直面する課題は、過去の単一の出来事ではなく、現在進行形の複合的な社会経済的疾患です。キャリアコンサルタントが効果的な支援を行うには、この構造を深く理解することが不可欠です。就職氷河期世代が抱える課題は、労働市場での失敗という「第一の傷」から、将来の「第四の傷」へと、個人、家族、そして国家経済全体を蝕む悪循環を形成しているのです。


構造的課題の診断:世代を蝕む悪循環

就職氷河期世代(概ね1970年~1984年生まれ)が直面する課題は、日本の生産年齢人口の中核約1,700万人を巻き込み、構造的なショックから複合的な社会経済的疾患へと進行しています。

1-1. 最初の傷:バブル崩壊が生んだ長期的な賃金格差

  • 構造的ショックと非正規雇用の爆発: 企業の採用抑制の結果、この世代の15~24歳人口に占める非正規雇用者の割合は、1994年の22.2%から2005年には47.7%へと爆発的に増加しました。
  • 埋めがたい賃金格差: たとえ後に正規雇用へ移行できたとしても、新卒正規の同世代に比べ、平均年収が男性で約130万円、女性で約180万円も低いという長期的な賃金格差が残っています。

賃金格差の出典:厚生労働省ウェブサイトの「賃金構造基本統計調査」

1-2. 第二の傷:不本意非正規の固定化とスキル剥奪

  • 不本意非正規の固定化: 2024年時点でも、正規雇用を望みながら非正規で働く「不本意非正規雇用者」が35万人存在しています。この状態が、スキル形成機会の剥奪や低賃金という「第二の傷」を生み、キャリアの停滞を固定化しています。

1-3. 第三の傷:社会的孤立と介護離職リスク

  • 8050問題と社会的孤立: 経済的な不安定さやキャリアのつまずきは、80代の親が50代の子供の生活を支える「8050問題」の主要な背景です。また、長期のひきこもり状態にある中高年の中心もこの世代であり、社会的孤立といった「第三の傷」にあたります。
  • 介護離職リスクの増大: この世代及びその親の加齢に伴い、働きながら家族の介護を行う有業者が10年前の同年代と比較して25万人増加しており、介護離職リスクが増大しています。

1-4. 第四の傷:将来の社会保障危機(「2040年問題」)

  • 老後貧困リスク: 長期間の非正規雇用や低賃金の影響で、この世代の多くは、将来受け取る年金額が最低生活費を下回る「老後貧困」に陥るリスクが極めて高いと指摘されています。クライアントの心底にある「このままでは人生が詰む」「結局、自分は損ばかりだ」という絶望的な感情に、わたしたちキャリコンはここで向き合う必要があります。
  • 社会保障制度への負荷: 就職氷河期世代が60代に達する2040年頃には、日本の社会保障制度に計り知れない負荷をかける「2040年問題」として懸念されています。

国が打ち出す「3本柱」:全方位的な支援プログラムの全体像

政府は就職氷河期世代支援を「待ったなしの課題」と位置づけ、以下の「3本柱」で支援プログラムを推進することを決定しました。これらの柱は、上記で診断した「4つの傷」を全方位から治療することを目的としています。

重点支援内容実施の方向性(例)
柱1:就労・処遇改善に向けた支援不本意非正規雇用者や介護に直面する者の正規雇用化・処遇改善を実施。(第一・第二の傷に対応)公的職業訓練、オンライン職業訓練の全国化、介護による短時間勤務者の業務代替者への助成追加など。
柱2:社会参加に向けた段階的支援無業者やひきこもり等、社会とのつながりに不安を抱える人々への息の長い支援を強化。(第三の傷に対応)ひきこもり相談支援を行う自治体の拡大、居場所づくりに取り組む自治体支援、専門家による心理的相談ネットワーク構築など。
柱3:高齢期を見据えた支援将来の生活の安定に備えるための課題に焦点を当てた、新規に追加された柱。(第四の傷に対応)生活困窮者への家計改善支援、金融経済教育の強化(ライフプランニングに重点)、居住サポート住宅の創設・普及など。

(出典:内閣官房「就職氷河期世代等支援プログラムの基本的な枠組み」


キャリアコンサルタントが担うべき支援のロードマップ

【構造理解こそが「希望」の出発点】

政府は就職氷河期世代支援を「我が国の将来に係る重要な課題」と位置づけ、集中的な支援を継続しています。

キャリアコンサルタントの皆様の使命は、就職氷河期世代の持つ「埃をかぶった経験というお宝」を磨き上げ、クライアントに「あなたの経験には意味がある。変革を担うキーパーソンだ」という強い希望を提示することです。そして、希望を起点に、クライアントを通して企業、そして社会の変革を導くことなのです。構造理解こそが、絶望を希望へ転換させる戦略的な第一歩です。


【ロードマップ実践への2つのステップ】

構造を理解し、あなたの現場での行動に落とし込むための、具体的なアクションステップです。

クライアントの「安定へのニーズ」を分類する

目の前のクライアントが、「失いたくない安定」にしがみついているのか、「強く渇望する安定」を求めているのか、そのニーズの違いを意識するだけでOKです。

過去の「困難な経験」を「企業価値」に言い換える

クライアントの過去の困難や非正規経験を、「レジリエンス」や「自律性」といった企業が求める「隠れた強み」として捉え直して伝える。


いっきょうの視点

キャリアを「落語」として可視化する意味

私、いっきょうは、クライアントの経験談を伺う中で、その個人の物語の背後にある社会構造や時代の矛盾をひもとく「落語」を創作しています。

キャリアとは単なる職歴ではなく、社会という舞台の上で演じられた一つの「物語」です。

この物語を客観的な作品として再構築することで、クライアント自身が自身の人生に「意味」を見出し、「価値」として捉えなおしをします。

キャリアコンサルタントの皆様の使命は、「価値の再発見」です。氷河期世代のクライアントの「埃をかぶった経験というお宝」を磨き上げ、未来の可能性へと繋げましょう。

【具体的なセッションの実例】

キャリアが落語になると、人生は策士になる。影褒め転機セッション体験記「すすむはん編」


あなたの支援の質を高め、クライアントを「戦略的資産」へ進化させるために

このブログを読んで「ブリッジ人材」をどう見出すかや、戦略的支援に興味があるキャリアコンサルタントの皆様へ。

著者いっきょうのメルマガでは、氷河期世代の経験を『価値』に変える物語化の極意や、氷河期世代が抱える深層心理の「読み解き方」など、現場ですぐに活かせる情報を砕けた内容でお届けしています。あなたの支援のヒントがきっと見つかります!

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ABOUT ME
いっきょう影褒め亭
いっきょう影褒め亭
国家資格キャリアコンサルタント×人生小噺家
「国家資格キャリアコンサルタント×ビジネス小噺家」 落語の世界観に魅せられ、13年のキャリアを持つ。「死神」や「いきだおれ」といった、一癖ある演目を好む。国家資格キャリアコンサルタントとしての知見と落語を融合し、独自のスタイルを確立。人の強みや人生の物語を落語に仕立てることで、第三者視点からその人の魅力を浮き彫りにする活動をしている。 また、13年間継続している合気道の経験から、落語と合気道に共通する「相手を活かす」考え方や、継続のコツについて研究を重ねている。
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